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2015.12.05

蜜柑(みかん)の味

12月5日(土) 見栄えは良くないが美味しい蜜柑を一箱買った師走

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スーパーで売られている袋詰めの蜜柑に慣れていると、形もお世辞にも良いといえず、不揃いで、ところどころ皮に傷もあるから、見た目は悪い。

防腐剤やワックスで表皮を処理してないそのまま、一つ試に食べてみると袋は薄皮で甘みと酸味の強い蜜柑らしい味である。

今年も障がい者団体を通して10キロ箱詰め蜜柑を買ったので、義母と娘にわけてあげようと思っている。見栄えはよくないが。

蜜柑の季節になるといつも思い出すのが芥川龍之介の「蜜柑」という短編で、高校生の頃に読んだ芥川の読みはじめともいえる小説だった。

汽車で乗り遭わせたった小娘、これからまさに奉公に出ようとする娘が、踏切で手を振る弟たちに蜜柑を汽車の窓から放り投げたという、たったそれだけの話だが、まるで一枚の絵のようにイメージが残った。

その蜜柑はきっとこの写真のように、つやつやのワックスもなくきれいに粒のそろったものでもなく、家をでるきわに蜜柑畑からそっともぎ取り懐にしまったものだったに違いない。

奉公に出る小娘というイメージは田舎の百姓家で育った、自分の亡き母親が尋常小学校を終え、東京の大きな屋敷に奉公に出たと聞いた、そのイメージに重なっているから、余計に気になったものかも知れない。
ほんの数ページの小説だったがページ以上に心に残る読後感で、そういう小説は誰しもあるのだろうと思う。

蜜柑もリンゴも、トマトやキュウリさえ、最近は味がしない。
あの野菜独特の強い香りなど、もうほとんどお目にかかることも少なく、だから「味がしない」と思っているが、その味がしない「味」が果物や野菜の今なのだろうか。

流通にのり、消費者の食卓でたくさん食べてもらおうと、品種も見栄えも改良の努力をしているのだろうと想像はつくが、なんだか「ほんとう」の果物や野菜から、その素朴さや土の香りが消えて、別のものになってしまったような、そんな気持ちがする。

田舎の叔母さんの裏の畑でもぎたてのトマトをそのままかじった青臭さ。なまじ昔の味を知ってるからそう思う自分の方が、時代の流れに取り残されているのだろうか・・・

蜜柑の味、弟たちに放り与えた奉公娘の、暖かい蜜柑の味に懐かしむ今日この頃である。


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コメント

は~~い、僕も田舎で食べたトマトの味が忘れられず、1個そのままかじっています。(単に料理が面倒くさいってだけですが・・・ははは)

投稿: マミケン | 2015.12.08 17:01

こんばんは。

今日図書館で外山滋比古のエッセイを立ち読みしました。
「傷のあるリンゴ」という本を手に取りました。

傷があるほうが糖分が多くて甘い。
リンゴだけじゃなく、人も失敗して傷ついたほうが魅力的だって。

私、先日、コンビニの駐車場で足がもつれてものの見事にすってんころりん。
痛いというより、恥ずかしくて恥ずかしくて。
しっかり、膝小僧に傷をつけました。
少し、魅力が出たかしら?(笑)

投稿: tami | 2015.12.08 22:16

間宮さんこんばんは。
昔の青臭いトマトを子どもらの世代は美味いと思うのかどうかわかりませんね。
食も時代とともにあるということでしょうか。
自分で土から育てる野菜がきっと一番でしょう、味はともかく満足感は満たされそうですね。

投稿: ちょっと一休み | 2015.12.08 22:40

tamiさんこんばんは、今のままでも十分魅力的ですよ(スリスリ)
肥料は牛糞の蜜柑だそうです、牛糞、牛糞が甘さを増す(笑)
見た目と中身の落差ですね。
率直が良いと会話をた後で後悔して、少し沈黙して受容に徹しようかと・・・迷うこと多き人間関係のこの頃、迷いも魅力が増す素なのでしょうか(笑)
まあ、所詮身の丈以上の自分などないので、のらりくらりと自転車を走らせてるのが本当は一番似合ってると思うのですね。

投稿: ちょっと一休み | 2015.12.08 23:14

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