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2012.01.25

とん汁の味

1月25日(水) 昼飯は残り物でも美味し

 昼飯は何を喰うか。
 昨夜の晩飯の「とん汁」が残っていたので、こいつに目玉焼きの一つもつけて立派なランチだ。
 妻に「義母は昼は何を食べてるのだろうか」と言うと「あの人は歳だからちょっとしか食べないし、残り物でしょ」と。

 働いていた頃は毎日500円の野菜中心の弁当を食べていたが、時間に余裕がある今は、自転車散歩して午後になっても、自宅で自分で作る昼飯が美味いと思うので、ほとんど外食などしなくなった。
 今日のように、昨晩の「とん汁」の残りがあれば、大根にもしっかりと味が沁みて、昨日より美味いほどだ。

 専業主婦と言われる人たちは何を昼食で食べてるのだろうか?若い方たちはママ友たちと、近所のランチを楽しんでいるのか・・・

 僕の母親は町の工場で働いていたから、昼の1時間の休憩は近所のスーパーで買い物をし、そのまま慌てて家に帰り、それこそご飯とみそ汁と余り物の昼食を食べて、また工場へと出かけていた。
 食事というにはいささか貧しい昼食だと思うのだが、当時はそんな程度でも昼食は昼食だった。

 「とん汁」には想い出がある。
 高校を卒業してすぐに就職した僕は夜学に通っていた。しかし営業という時間の決まらない仕事に学校に行くのも大変で、すぐに辞めてしまった。

 それからは、アルバイトで暮らしていたから、給料は家賃と学費と食料費と本代でほとんど消えてしまった。
 アルバイトの給料などたかが知れていたので、ガスも水道もない電気だけの3畳一間の離れ小屋を借りていた。
 水道なんて井戸水で手押しポンプで洗面してたぐらいだった。
 それでも、夜学の文学仲間の友人たちがいて、みな似たりよったりの暮らしで、夜中まで騒いであれこれの文学話などをしていたものだ。

 その頃、出費を抑える方法といえば、衣類は買わない、食べ物は最低限ってもので、近くの一膳食堂の「とん汁とどんぶり飯」か「ラーメン・ライス」、これに学食を加えてローテーションにしていた。
 昔々の話である。
 金はいつも持っていなかったが、楽しく愉快な時代だった。
 ある意味、貧しい暮らしの中でも、なんだか心だけは豊かだったような気もする。
 まあ、おかげで体重は増えることもなく、いつも痩せてたのだったが。

 そういう暮らしを若いときに経験すると、金など無ければなくて何とかなるという思いが心のどこかにあって、バブルの頃の飽食生活にはなかなか馴染めなかったし、美食とは縁遠い暮らしが普通になって、食べることへの意欲やこだわりは今でもあまりない。

 「とん汁」、大根、ニンジン、こんにゃく、サトイモ、ゴボウ、これだけの野菜類に豚肉が入っていれば、もう十分なもので、ましてや昨晩から一日経って、味もよくなって・・・
 娘が料理教室なんてところに通って、あれやこれや、ケーキやスイーツまでも習っているようだが、受講料もけっこう高い。
 僕は「そんなに立派なものを作らなくてもいいのに」と口には出さないが腹の中では思っている。
 どんな食事でも、しっかり食べられて、楽しい雰囲気があればいいんじゃないかと思うけれど、ちょっと世の中の食事風景とかけ離れているのだろうか。

 「今日の昼食は、あれを作ったとか、昨日の残りを食べた」といちいち妻に報告して、「金を使うこともなくなったなぁ~」と言うと、ちょっと嫌な顔をされる。
 僕としては別にガマンしているわけでもないし、「収入がないから慎ましい生活」をしているわけでもない。

 仕事に追われて、慌てて街の弁当売り場で買ったり、街の食堂で時間に追われて昼食を摂ったり、そういうサラリーマン暮らしの昼食よりも、はるかにご馳走に思えてならないわけだ。

 もう、飽食の時代は終わったと思う。
 
 

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

ははは、題名の「とん汁の味」って小津安二郎の映画の題名みたい(「秋刀魚の味」という映画がありました。今こんな名前の映画作ってもだれも見ないだろうなぁ)

僕も食にこだわりはない。「僕の分かるのは『すごくまずい』だけだぜ」と食自慢の知り合いに言っては、複雑な表情をされます。ははは

食も生き方と同じで、今ある物を楽しめればいいんじゃないかなぁ・・・「昔は良かった」とか「隣はもっといい」とか言い出したらキリがない。全員が世界1になれるわけではありません。でも今の世の中は全員が世界1になろうとしている世の中のようだなぁ・・・ははは

投稿: マミケン | 2012.01.26 10:36

家で食べる何気ない料理が一番おいしくて幸せを感じますね。昨日作った味の良くしみた煮込んだようなとん汁、想像するだけで美味しそう!ネギや豆腐を少し足してキムチ鍋のモトを少したらしてみてください。新しい一品になります。我が家では朝の味噌汁が残るとこうして夕食のスープになります。おいしいですよ。

投稿: 杉山 | 2012.01.26 21:51

間宮さんこんばんは。
ははは、「すごくまずい」ってのはどんな代物なんでしょうね、僕はゴーヤとクワイこれがまずいと思う代表格で、あとはまずくはないが嫌いだってのがあります。
TVドラマ「開拓者たち」の中で、日本に引き上げた千振開拓団の人たちが那須高原で農業を始める、痩せた土地で食べるものにも苦労するんですが、その中で蛇を捕って焼いて食べるシーンがありました。
人間って無尽蔵の適応能力があるものだと思いました。
この21世紀の現代では考えられない食料事情ですが、人って案外それなりに生きる力があると思うと、ちょっと安らぐものです。

投稿: ちょっと一休み | 2012.01.26 22:46

杉山さんこんばんは。
キムチチャーハンに次いでレシピ第2弾、ありがたいですね。
一人昼飯は誰にも「まずい」と言われないのがいい、自分で満足できれば一番美味いですからね。
僕は実験してるんですよ、野菜類をことごとく切って冷凍できないかってね。
ネギ、ピーマン、シイタケ、もやし、ミョウガ・・・何でも冷凍して、チャーハンや麺類の具に使えないかってね。
で、今までの一番はちょっと値段が高いが上等な生しいたけの冷凍、これがけっこういいんですね。
まあ、料理というよりも楽しい大人のママゴトかもね。
もちろん自分の昼飯のときだけですが、そういう遊び心で食べるのが、生きてる実感につながったりして・・・(笑)

投稿: ちょっと一休み | 2012.01.26 22:58

こちらでは「豚汁」というのですよ。
一休みさんの文を読んでいたら久々に食べたくなりました(笑)。
数年前、地域の役員をしていました。防災訓練の時に炊き出しもして大なべ2杯くらい「とん汁」作りました。
もし被災して避難所で「とん汁」よばれたら、疲れた体と心がきっとホッとするでしょうね。温かくて具だくさんの「とん汁」はそんな力があるような気がします。

投稿: feliza | 2012.01.27 12:28

felizaさんこんばんは。
炊き出しのように大鍋でつくるといっそう美味しいですね。
みんなで食べる、上も並もない同じとん汁だからこそ、体も心も暖まるのかなぁ。
祖父江町の黄葉まつりに行くと毎年大きな鍋でとん汁を売っています。一杯200円って安いでしょう。
名古屋地方も今日は格別寒かった、暖かな豚汁なんかもってこいの日だったですね。felizaさん料理も上手そうだしなぁ~

投稿: ちょっと一休み | 2012.01.27 22:23

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